昨日パートのオバが帰宅時、鍵を玄関ロックをする音が
しなかったので「又忘れて帰った」と呆れて玄関まで向かった。
オバは帰った訳ではなくドアの外で立ち話をしていて
ロックし忘れたらしかった。

話の相手は警官だった。

覗き窓から確認してドアを開けたら、オバは気色ばんで
私に告げた。

「隣の人死んではったんやて」

オバを遮るように警官が訊ねてきた
「隣の男性を最後に見掛けたのは何時頃でした?」

お隣はうちと同様オフィス使用しているらしく、
ドアに社名プレートを貼っていたが、
いつもお見掛けするのは事務員さんと思しき
女性だけで、男性は一度も見た事が無かった。
その事務員さんをお見掛けしたのも、
今年に入って一度在ったか無かったか。

そんな説明をしている最中も、オバは話に
入ってこようと躍起になっていて、
それがいつも以上に鼻について警官に
「御用がお有りでしたらいつでもお声掛け下さい」
と告げてオバを無視してドアに鍵をした。

フロアには少し異臭がしていたけれど、
ただ単にその家の臭いだと思っていた。

10分後位にインターフォンが鳴って
「話を聞かせてほしい」と言われ又ドアを開けた。
警官の側に私服刑事が3名立っていた。

最後にその部屋の出入りを見たのは何時だったか。
賃貸だったか分譲だったか。
部屋の間取りは同じか。等。
「管理人さんに聞けば分る話なのに?」と
思いながら一通り答え、こちらの気になっている事を
訊ねてみた。

どうやらお隣は昨年末に廃業して、オーナーさんが
住居として使っていたらしい。
お友達が今年に入って数回尋ねて来たものの
まったく連絡が付かず、この日管理人さんに鍵を
開けてもらい中に入ったらしい。

刑事の話では「“そんなに”日は経っていない」らしい。
「長い事経ってたらもっと臭いがキツイからね」
と言っていた。
管理人さんから話が聞けない訳がやっと分った。
お気の毒にその尋ねてきたお友達共々
全てを“見て”しまったのだ。
本当にお気の毒だと思う。

15分程の話で刑事さんとの話は終わった。
もう、これで引き上げるんだろうと思った。

しばらく憂鬱な気持ちで仕事をしていたが、
急に部屋の中に異臭が立ち込めてき、
何も考えずにドアまで駆け寄り覗きに顔を近付けた。

部屋の真ん前に銀色のシートに包まれた細長い
物体が横たわっていた。

まだ終わってなかった。

人体の腐敗臭は独特だと聞いたことがあるが、
本当に、表現しようのない独特の臭いだった。

昨日の夕方の話だったのだけど、
それ以後匂いの薄い食べ物が口に出来ないでいる。
自分の嗅覚が信じられなくて、珈琲ばかり飲んでいる。

「その臭いを覚えている」というよりも、
「すべてがその臭いに思える」
一晩眠れば大丈夫かと思ってたけど、
少し何かの臭いがすると「その臭い」かと思ってしまう。

今日、仕事から帰って来てもやっぱり少しの臭いがイヤで
久し振りにケーキを焼いた。
家中に甘い匂いが充満して、ちょっと食欲が出た。
材料が残っていて本当に良かった。

コメント

魔美
魔美
2006年2月15日17:13

題名からにしてVDのあまーいお話なのかな?なんてのん気に読んでたら、なんだか違う方向に。。
いやー、小説みたいだけど現実のお話なんですよね。
ミステリーの1ページを読むような感じがしました。

nao-p♪
nao-p♪
2006年2月16日1:17

魔美さん>
はい、悲しいことに目の前で起きた現実の話です。
そういえば、バレンタインデーにチョコシフォンは
紛らわしいですね。
別に意図的ではなくて、たまたまそれしか材料が
無かったんですよ。
あんまり美味しくなったです(苦笑)

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