いつもマニキュアだけはちゃんと塗っていたい。指先が剥げかけて
いたりしたら、ラメやメタルでカバーしたりして、いつでも色が
ついている状態にしている。私にとってある意味「武装態勢」で
ある。
けれど今日はまったく何も塗らなかった。12月入った頃から職場の
オバが「今年はイヴが金曜日でいいねぇ〜」とか「クリスマス
プレゼントは何買ってもらうの?」とかトンチンカンなネタ振り
をしてきて鬱陶しかったからだ。それでなくてもちょっと爪に凝った
時は目敏く「デートなんや?」と断定的な物言いをしてきて
その度「別に」とシラけて答えてるのに、弱っている時にこれ以上
痛くもない腹を探られるのはまっぴらだ。
案の定出勤してきた奴は人の顔をみてニヤニヤしてる。それでも
まだその時は「ケッ!相変わらずワケ分んねぇ奴」位の気持ちで
業務をこなしてた。ところが、キッチンに珈琲を入れに行った際
奴はこちらに背を向けてボスに何か耳打ちをしている。小学生の
ガキぢゃあるまいし、イチイチんな事気にしてられないから
放っておいたら、いきなり奴はこちらに聞かせるようにボスに
喋りかけた
「この人(私の事)も病院とか行ったりでお昼に抜ける時間が
あるかもしれへんから、私もちゃんとパソコン教えて貰わな
アカンわね、社長」
ホェ?いきなり何喋ってんのよ、アンタ。
ボスに目をやるとあからさまに苦笑いしてるしさ。
そして答えようもなくキョトンとしている私に、まるで人の秘密
を公言する瞬間のように、奴は嬉しそうに
「おめでたなんやろ?」とほざいた。
「はぁ?」…素っ頓狂な声を上げて呆然としている私に、さも
「総て分ってるのよ」でも言うかのように畳み掛けてきた
「この前からオカシイなと思ってたんよ。煙草吸ってないし、
たまに気分悪そうにトイレ行ったりしてたし」
「この前の焼肉もビール殆ど飲んでなかったやん。お茶漬けとか
食べたりしてたし」
最後の方の言葉はもう聴いてなかった。完全に頭に血が上り、
怒りで体が震えてきた。
「オタク、ナニ勝手に喜んでん?」「そういうの“ゲスの勘ぐり”
っていうねん」「貧相な想像力働かせてナニ勝手に盛り上げって
るねん!」
「黙って聞いてりゃ調子に乗ってナニ訳分らんこと言ってんな?」
「調子に乗るんもえぇ加減にしぃや!」
怒鳴りちらす私をボスが取り成す迄の間、奴は口を真一文字に
結んでこちらを睨み付けていた。が、反論の言葉はさすがに出ない
ようだ。挙げ句、ボスからも「本人に確認もせずに口にしていい事
と違うやろ?」とたしなめられてムクれ面をし持ち場に戻った。
しばらく体の震えが止まらなかった。とにかく腹がたって
訳もなく悔しかった。
「コイツは自分の言ってることが、分ってんのか?」
「アタシは、こんな奴のせいで胃カメラ飲んで痛みに耐えてんのか?」
別にそれだけが胃潰瘍の原因だとは思っていない。
というか、37歳にもなって職場で苦手な人間一人あしらえないのは
社会人として失格だと自覚もしている。それが尚更落ち込みの
原因なのだと、指摘もされた。
そうこうしている内に胸焼けが急激に襲ってきて、慌ててトイレに
駆け込んだ。朝は食べられなかったので、込み上げてきたのは
胃酸だけだった。案の定半分は血の色だった。
職場で泣いたのなんて何年振りだろう?絶対に悟られたくない
ので、トイレで声を殺して泣いた。これはきっととても恥ずかしい
ことなんだろう。大人として社会人として非常にマズイ人間なんだ
ろう。きっともっと上手い対処法があるんだろう。けれどもう
どうでも良くなってきた。
近年稀にみる、ブルーなイヴだ。こんなもんだよ、アタシ。
みんな、いいクリスマスを送っていますか?
どうぞみんなにとって暖かいクリスマスでありますように。
いたりしたら、ラメやメタルでカバーしたりして、いつでも色が
ついている状態にしている。私にとってある意味「武装態勢」で
ある。
けれど今日はまったく何も塗らなかった。12月入った頃から職場の
オバが「今年はイヴが金曜日でいいねぇ〜」とか「クリスマス
プレゼントは何買ってもらうの?」とかトンチンカンなネタ振り
をしてきて鬱陶しかったからだ。それでなくてもちょっと爪に凝った
時は目敏く「デートなんや?」と断定的な物言いをしてきて
その度「別に」とシラけて答えてるのに、弱っている時にこれ以上
痛くもない腹を探られるのはまっぴらだ。
案の定出勤してきた奴は人の顔をみてニヤニヤしてる。それでも
まだその時は「ケッ!相変わらずワケ分んねぇ奴」位の気持ちで
業務をこなしてた。ところが、キッチンに珈琲を入れに行った際
奴はこちらに背を向けてボスに何か耳打ちをしている。小学生の
ガキぢゃあるまいし、イチイチんな事気にしてられないから
放っておいたら、いきなり奴はこちらに聞かせるようにボスに
喋りかけた
「この人(私の事)も病院とか行ったりでお昼に抜ける時間が
あるかもしれへんから、私もちゃんとパソコン教えて貰わな
アカンわね、社長」
ホェ?いきなり何喋ってんのよ、アンタ。
ボスに目をやるとあからさまに苦笑いしてるしさ。
そして答えようもなくキョトンとしている私に、まるで人の秘密
を公言する瞬間のように、奴は嬉しそうに
「おめでたなんやろ?」とほざいた。
「はぁ?」…素っ頓狂な声を上げて呆然としている私に、さも
「総て分ってるのよ」でも言うかのように畳み掛けてきた
「この前からオカシイなと思ってたんよ。煙草吸ってないし、
たまに気分悪そうにトイレ行ったりしてたし」
「この前の焼肉もビール殆ど飲んでなかったやん。お茶漬けとか
食べたりしてたし」
最後の方の言葉はもう聴いてなかった。完全に頭に血が上り、
怒りで体が震えてきた。
「オタク、ナニ勝手に喜んでん?」「そういうの“ゲスの勘ぐり”
っていうねん」「貧相な想像力働かせてナニ勝手に盛り上げって
るねん!」
「黙って聞いてりゃ調子に乗ってナニ訳分らんこと言ってんな?」
「調子に乗るんもえぇ加減にしぃや!」
怒鳴りちらす私をボスが取り成す迄の間、奴は口を真一文字に
結んでこちらを睨み付けていた。が、反論の言葉はさすがに出ない
ようだ。挙げ句、ボスからも「本人に確認もせずに口にしていい事
と違うやろ?」とたしなめられてムクれ面をし持ち場に戻った。
しばらく体の震えが止まらなかった。とにかく腹がたって
訳もなく悔しかった。
「コイツは自分の言ってることが、分ってんのか?」
「アタシは、こんな奴のせいで胃カメラ飲んで痛みに耐えてんのか?」
別にそれだけが胃潰瘍の原因だとは思っていない。
というか、37歳にもなって職場で苦手な人間一人あしらえないのは
社会人として失格だと自覚もしている。それが尚更落ち込みの
原因なのだと、指摘もされた。
そうこうしている内に胸焼けが急激に襲ってきて、慌ててトイレに
駆け込んだ。朝は食べられなかったので、込み上げてきたのは
胃酸だけだった。案の定半分は血の色だった。
職場で泣いたのなんて何年振りだろう?絶対に悟られたくない
ので、トイレで声を殺して泣いた。これはきっととても恥ずかしい
ことなんだろう。大人として社会人として非常にマズイ人間なんだ
ろう。きっともっと上手い対処法があるんだろう。けれどもう
どうでも良くなってきた。
近年稀にみる、ブルーなイヴだ。こんなもんだよ、アタシ。
みんな、いいクリスマスを送っていますか?
どうぞみんなにとって暖かいクリスマスでありますように。
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