その人は開口一番「残念ですけど…」と言った。
そんな言葉を使われなくても、検査結果が良くない
というのは表情で判った。左目の視力低下が加速しだした。

先週、内科の先生がいつも通り貧血の度合いを調べる為
目蓋の中を看ようとした時に「アレ?」と首を傾げた。
「左目辛くない?」と聞かれた。元々左目が弱い事は
知ってらっしゃる。けれど改めて言われた「ちょっと
左目疲れてるかもよ」

過去に数回検査したけど、10年程前から進行は止まっていた。
なのに又進み始めたらしい。

自覚が無い訳ではなかった。最近、何かを凝視するときに
左眼をつぶってウインクしながら見ている自分に気付きだした。
その都度気を付けていたけど、無意識の内に繰り返していた。
それに最近鏡を見て気になっていたのだが、私の眼、左右の
大きさが段々違ってきている。左眼だけがヤケに大きい。
右眼と比べて明らかに「力が入っていない」状態。
それが慢性化してきているように左だけ力なく開いている。
最初は気のせいだと思い込もうとしていたけどいい加減限度
ってものがある。最初にこの疾患が見つかった時に言われてた。このまま進行すれば左眼だけ力が入らなくなってきて動かなく
なるか、外側を向くようになるって。「とうとうきたか…」と
思った。

目の前のドクターは言葉を選びながら続けた。
「取り敢えず次回もう一度同じ検査をしましょう。その比較で
今後の進み具合とかある程度判りますから」
「最悪の事にならなければ生活には支障はないですし…」

『サイアクの事…?』
お腹に力を入れて尋ねた。「サイアクの事って、失明ってこと
ですか?」
ドクターは深く頷いた。

レッスンを待つスタジオのロビーでぼんやり考えていた
「ま、右眼は大丈夫なわけだから」「免許の更新出来るのかな?」
「でも、そうなると左眼外向いちゃうから色付き眼鏡に変えた
方が良いよなぁ」

レッスン中ずっと喋ってた。黙ると「コトン」と鳴りそうだった。
胸の中か頭の中か判らないけど、「コトン」って鳴ったら最後
収拾つかなくなる。だからずっと喋っていた。

帰りの大雨も都合良かった。木を隠すには森が一番だから。

今後の事は明日考える。今は眠りたい。こうやって書きながらも
まだ混乱している。とにかく眠ろう。おやすみなさい。

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