こらこら、「見栄はるな!」て突っ込まない!

私は基本的に集金って好きぢゃない。第一そんな大金の取引きは
ない訳だし、なにより邪魔臭い。それに一回集金すると次から
慣例になっちゃうのが常だからなるべく振り込みで済むように
リードしていく。(我が社ではこれを「客を育てる」と言う)
小さな会社や法人化していない個人事業主(しかも大多数が
土建関係)だからかなぁ〜り厄介な仕事で、私が抱える仕事の内
でも最も「仕事辞めたい病」が出る瞬間でもある。けど、中には
毎月早々にお振込して下さるのに「…れ?今月未だだぁ」って
データーが上がってくる顧客があり、そういう場合は大体
「飛んだ(倒産)」か「病気」かの2種類である。そして、今日の
お客様は経理を仕切っている奥様が入院されていて、他の人ぢゃ
「さっぱり訳わからん」て中小企業の大道パターンなケースで
ある。そしてその「事業内容」が「ファッションホテル経営」
な会社様なのだ。退院されても本調子ぢゃない奥様が、今日は
店の方に顔を出すと言う。で、店から帰りにでも来社して下さる
と言うのだが、そんな人に「ぢゃ来て」とは言い辛い。だから
「お店まで伺いましょうか?」となったのである。先方は
「いいの?女の子に来てもらっても」とかなり恐縮されていた
けれど、私が入社当初からのお付き合い、気心も知れているので
「いいですよ〜」と呑気に集金へGO!

これをお読みの皆さん。貴方が思い付く「ラブホ街」に例えば8件
のホテルが並んでいたとします。その8件中オーナーはっていうと
大体2〜3人。4件同じオーナーとか、3件同じオーナーとか。8件共
オーナーが全部別ってのはかなり稀です。だから当然私は「で、
どこのお店に入りましょ?」となる訳で、したら先方は一番女の子
一人が入り易そうな店鋪を指定して下さいました。もうね、お洒落
なんすよ、外観が。まるで大きなフレンチレストランの様な門構え。
駐車場からバラの香りが漂っているし。なんかもうウットリ…。
駐車場まで迎えに来て下さったフロント係の女性も「無理言って
すみません」と低姿勢で、なんだこっちが畏縮しちゃって、思わず
「ラブホテルにしておくのには勿体無い造りですね〜」とかって
キョロキョロして舞い上がってしまう始末。そして、フロントと
直結している事務所に通されたのでした。

私は居住地と勤務地が同一市内です。そして我が社は「低価格」
がウリな広告屋なので、市内ラブホの約9割方の会社様とは一度で
も取引き実績があります。今日事務所に通されてつくづく思いました

市内のラブホは絶対行かない!!!

モニター数半端ぢゃないよ!顔チェックどころか車から帰る方向まで
全部丸見え。すげぇ〜〜!!よくホテル内での殺人のニュースで
「一緒に居た男の行方を追っています」とかって報道されたら
すんごい早く見つかるでしょ?そりゃ見つかるよ、これだけ鮮明に
映されてたら。フロントの方に思わず「知り合いとか来りしません?」
って質問しちまいました。彼女の答えは「えぇ近所の奥さんが昼間に
来りするのよ〜。あと、娘の担任とか。だから私ここに勤めている
こと誰にも言ってないの」とのことです。いやぁ口が固くなけりゃ
勤まらん商売だ。

目的のオーナー夫人は「タクシーが掴まらずにちょっと遅れる」
と連絡があったそうで、事務所でお茶を出して頂いて、ベッドメイクの
パートさん一人を交えてお話に華をさかせておりました(と言っても
殆ど私が質問攻め)役所の近所にあるこの界隈は平日の昼間は
月曜が一番混むんだそうです。だからと言ってべつに公務員さん
が勤務中にやって来るのではなく、多分週末は家庭に縛られている
奥様達が「役所に行かなきゃ♪」と一番動き易いのではないかと
いう推測です。3月半ばの卒業シーズンには中高生で大変賑わう
為「想い出作り月間」と名付けられ普段ならビールのサービス
のところをアイスクリームサービスなんてやったら大当たりだった
そうです。あと平日昼間に一人でやってくるサラリーマンさん、
「プロのお姉ちゃんが後から来るのか?」と思いきや、
サービスタイムの3時間ぐっすり眠って、仕事へ戻って行く人が
結構多いそうです。「まぁパチンコ3時間したらへたすりゃ3〜4万
負けるわけやし、それを考えたら2500円で横になって眠れたら
安いもんやよね」とフロントさんが笑えば、メイクさんも「風呂
使うわけぢゃなし、備品使うわけぢゃなし、汚しても灰皿とコップ
くらいやから、めっちゃ助かる」と大変好評なようです。

こちらがとても目を輝かせて聞き入るもので、皆さん色々喋る、
喋る。なんでも救急車の出動要請も月1回位の割り合いであるそうで、私が「いわゆる“ふくじょーし(腹上死)”ですかぁ?」っと
身を乗り出すと、「そう思うやろ?案外腹上死って無いのよ。
なんやと思う?」と含み笑い。
なんと救急要請TOP1はギックリ腰
オイタワシヤ…
コトの最中はもちろんの事、以外にそれより多いのは、張り切った
男性が女性を“お姫さま抱っこ”しようとしてギックリ、
お風呂に入ってる彼女を抱き上げようとギックリ、が多いそうで。「救急車呼んで下さい」とベソかいた彼女からの電話を受けた
フロントさんは決まって「パンツ履ける?」と聞くそうです。
やがて救急隊員が到着する頃、身支度を整えた彼女に付き添われて
一糸纏わぬ姿の彼は救急車の中に消えて行くそうです。が、
救急車が来る前にバックレちゃう彼女も5割位の確率で居るそうで、
「担架に乗った男の子に精算してもらうのって気の毒やで〜」と
フロントさんは笑ってらっしゃいました。

そうこうしてる内に、急なチェックイン・アウトが重なって
皆さんバタバタと忙しく動き始められたのですが、なんと、
メイクさん一人とフロントさんの計2名しか居ないことにここで
気付いたのです(他の人も別の部屋に居るのかとばかり思っていた)
そして、私は昨夕例の如く一睡もしておらず、放っておかれると
寝ちまう状態。「ヤバイ!集金に来て居眠りする訳にゃいかん!」
と考えた末、「あの…なにか手伝います」と自己申告したのでした。
もちろんお二人共「いいのよ!気を使わなくて!」と必死で遠慮
されていましたが、そうしてる間にも仕事は溜まって行く訳ですし
「私に出来そうな事教えて下さい!」と席を立ってメイクさんの
後ろに付いて行ったのでした。と言っても私に出来ることなんて
たかだか知れているしね。メイクさんも汚物とかゴミの処理は絶対
触らせないし、「手袋ちゃんとはめてね」と何度も確認されてました。
で、お風呂掃除や室内のコップの交換をお手伝いしたのですが、
皆さんホテルのお風呂に入る時はとにかくちゃんと流してからね

掃除ってよりも薬品ブッ掛けたって方が正しいわ、あれは。
リネン類とかは思ったより衛生的だったけど。

やがて嵐の様な一時が過ぎ、ひたすらお礼を言って下さるフロント
さんに逆に申し訳なくなってきちゃった私は夕べ寝ていない事を
カミングアウトしました。
「いやぁジッとしてたら本当に寝ちゃいそうなんですよ」
「ぢゃ、寝る?」

「どうせ満室にはならないから一番安い部屋埋めちゃって」と
2階の5号室までフロントさんに腕を引っ張られて辿り着いた私。
聞けば大雨で高速が渋滞していた奥様はまだ時間が掛かるそう。
「奥さん着いたら内線鳴らすから周り見渡して降りて来てね、
鍵は自動ロックやから大丈夫よ」…
ケーキと珈琲まで持って来て下さいました。
「お客さんに出すケーキやから安物やけどね」
と言い残し、フロントさんは持ち場へ帰られました。
「いや、ケーキ美味しいっすよ」「珈琲も嬉しいっす」

私に記憶があるのはここまで。次に内線で飛び起きるまでの
1時間半弱、私はラブホの一室で爆睡してしまいました。

奥様が気を使われてバイト代を包もうとしたのには困ったけど、
異業種の方とお話しするって本当に面白いわ。
ラブホって全内装費を2年で回収出来なければ“負け”なんだそう
です。内装は2年に1回、外装は7〜10年に1回変えないと客離れが
戻ってこないそうです。そしてラブホの内装はそれ専門の内装業者
が在り、リニューアル時のネーミングも専門部署があるそうです。
ちなみに、一頃前は“ひらがな入れ”が主流だったそうですが、
今は“ヨーロピアン調”が流行で、逆にシンプルな英単語等は
イケてないと敬遠されるそうです。そして大昔から誠しやかに
囁かれている「隠しカメラで盗撮されて裏で売られる」って噂…
古いホテルでは本当にあるそうです。今は改装毎に御上の立ち入り
があったりするのでさすがに無いそうですが、中には自分が映って
いる現物をビデオ屋で発見し、警察に駆け込んでガサ入れ喰らう
って話もあるそうです。(その場合は、プライバシーの侵害か?
肖像権問題か?ギャラの未払いか?(をい!)

なんだか慌ただしかったけど面白かった1日でした。
しっかり「週末の夜だけバイトに来て!」って言われこまりまし
たが、「二度と来るな」と言われるよりはましだしね〜。

そして帰り際奥様は「今度は彼氏とおいでよっ」と笑いながら
プレミアム会員証を握らせて下さいました。
市内ではイヤですっっっ!

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